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背後からわたしを呼ぶ声。今この場でわたしの名前を知っているのは一人しかいない。

「久しぶり、佳奈子」

わたしは振り返り、彼女の名前を呼んだ。

「久しぶり!最後に会ったのっていつだっけ?」
「多分、五年前じゃないかな」
「もうそんなにか~」

感慨深そうに呟く佳奈子。

そしてジッと私を見た。

「何?佳奈子?」

その視線にあまりいい意味がないのを感じ取りながら私は訊いた。

「や。五年経つのに変わんないなと思って。背が」

空気というものが物質だったなら、この一言でひびが入った。

「佳奈子~!?」
「や、ホント、打ち止めだったのね、アンタ」
「言っていいことと悪いことがあるわよ!バ佳奈子!」

気にしてるのに気にしてるのに気にしてるのに~!!

「アンタ怒ると私をそう呼ぶトコまで変わんないのね」

せめて腹立てる怒るなりしてよ。そんな冷めた目で見られたら居た堪れないじゃない!

「うるさいバカバカ!」

佳奈子をポカポカと叩いてみるが、ビクともしない。

「アンタ、ホントに高校生?」
「うぅ~」

子どもっぽいとは自分でも思う。思うけど…!

「佳奈子はホントに私と同い年?」
「アンタが子どもすぎるのよ」
「……」

反論できないのが悔しい。

「星歌が子どもっぽすぎるから、星愛が精神年齢高くなるんじゃないの?」
「うぅっ」

それは……。

「背だって、あの子は順調に伸びたんでしょ?」
「そう、だけど……」

両親が同じで、同じものを食べていたはずなのに。どうしてこうも精神的にも肉体的にも成長に差が生じてしまったのか。
私としても不思議でしょうがないけど。

「何歳の時に妹に抜かされたんだっけ?星歌?」
「……私が、小六のとき」
「そうかそうか。じゃあ割とすぐだったのね?」
「うぅっ」

グウの音も出ない。

「――佳奈子の意地悪」
「いやいや、私も大人気ない。子どもに小憎たらしい呼び方されたからってつい本気になって苛めるなんて」
「――っ!」

佳奈子め……っ。

「散々わたしのこと言ってたのに、自分だって子供じゃない!」

「は~いい天気ね~絶好の入学式日和。桜は満開だし、快晴だし、言うことなしね~」
「っっ」

無視された。

それはもう、きれいに無視された。

「佳奈子のバカっ!もう、先行くからね!」

私の苛立ちと不機嫌は最高値を記録し、佳奈子を置いて先に校舎へと走った。

「アンタ私と同じ三組だからね~」

焦ることなく、掲示板を見ることを失念していた私に佳奈子は背後から叫んだ。

「も~っ」

腹が立つ。腹が立つ腹が立つ腹が立つ~!

その対象は佳奈子ではなく、自分。

つくづく様にならない。完璧になりきれない自分がいやだ。

「ばかばかばかばか~!」

そんな風にしながら歩いていたのは悪かったのかもしれない。

闇雲に校舎を錯綜した私。

考えなしに歩いていた私はふと、自分の世界から現実世界に目を向けた。

「あれ――?ここ、どこだっけ?」

校舎じゃなくて、迷宮に入り込んでしまった。

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