「なんとなく、かなぁ……?」
ありのまま、舞安に伝えた。
「ーー」
「結構早起きしたでしょ?舞安、お化粧バッチリだし、髪もセットしてるし。気をつけてたんだけど、私歩くの早いから、追いつくの大変だったろうし。それで映画館では人混みに揉まれたから、疲れたかなぁって」
疲れる要素はいっぱいあったのだ。
舞安は普段と変わりなかったけれど。
こうやって理由を並べて、杏香は気付いた。
(女の子って、大変だなぁ)
と。
化粧をバッチリやって、髪をセットして、可愛い服着て、ヒールのある靴で歩いてーー。
大変さがわかって杏香は顔が青くなった。
「ごめん、もっと考えれば良かった。ーー舞安、大丈夫?」
身を乗り出して舞安に尋ねた。
そしたら。
「ーー」
舞安はまるで、狐に鼻を摘まれた、って顔をした。
(えーー?)
その反応が意外で、杏香は固まった。
「……。バカね、杏香」
「えっ!?」
(バカ!?バカっ!?……なんで?)
まさかこの状況でそんな返事が返ってくるとは想わなかった。
「大丈夫よ。それより、お腹空いた」
澄ました顔の舞安はいつもの舞安に見えて。杏香は安心した。
「あっ、うん。舞安は決まった?」
シートに座り、二人でメニューを見た。
「……迷ってる」
「何と何?」
舞安の指が二つの商品を指差す。
「あぁ。確かに迷うね」
けれど丁度良かった。
「私この秋の味覚、きのこの和風スパゲティにするから、舞安はツナのトマトクリームパスタにしなよ」
「……良いの?」
フワフワと浮いてしまいそうな、どこかに飛んで行ってしまいそうな。そんな頼りない声で舞安は言った。
杏香は力強く、満面の笑みで言った。
「良いよ、私これ食べようと思ってたし」
「……」
「あっ!ねぇ舞安、セットがあるよ、セットにする?」
「ーー。うん」
「じゃあ店員さん呼ぶね」
杏香は備えつけのボタンを押した。
待つことなく店員がやってきた。
「ご注文は?」
「Cセット二つ」
杏香が店員とやり取りしていくのを舞安はただ、見ていた。
途中。
「舞安、飲み物は?」
とか。
「舞安、サラダとスープは?」
とか。
「デザートどれにする?」
と話し掛けられるまで。

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