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「車に気をつけろよ」

ありがとう、お父さん。

「行ってらっしゃい。星歌」

おじいちゃま、今のわたしにはその笑顔が妖しく見えるわ。

「気をつけてな、星歌」

重低音な声が渋くて素敵なおじいちゃま。


とても目立つ素敵な家族に見送られ、高校に向けて一歩足を踏み出した。


駅まで続く商店街を歩き、電車に揺られること二駅。

二駅だから長い間電車に乗らないんだけど、でも、結構混んでる電車だから電車が揺れるごとに人に押しつぶされて……、辛い!

人波に溺れてしまう。

くぅっ、こういうとき、星愛くらい背があったらなぁ……。背低いと本当、しんどい。


「はぁっ、やっと解放されたぁ」

駅につき、人に押されながらホームに降りてホッとする。

ホームにはうちの学校の服を着た男子、女子がいた。ネクタイの色が違う人はきっと上級生だろう。

この駅を利用する客の八割はうちの学校の生徒のようだ。背広姿の人など殆どいない。


今、わたしと同じ新入生の子は何人いるんだろう?

その子たちもわたしと同じ気持ちなんだろうか?

あるいは、上級生も入学したときはわたしと同じ気持ちだったんだろうか?


わたしと同じで、新しい環境にワクワクする躍動感と、新生活への期待と、一歩大人になることへのくすぐったさを感じているんだろうか。

嬉しいような怖いような。そんな複雑な思いを抱えているんだろうか。


そんな複雑な感情を持ちながら駅から五分ほどのところあるにわたしの通う学校への道を歩く。


真新しい革靴はまだ硬くて、歩きづらい。

踵が擦れて少し痛い。硬い革靴のせいで足は窮屈さを訴えている。 

校門に入ったら校舎まで続く桜並木のトンネルをくぐる。艶のある革靴が、地面に落ちた桜の骸を踏みながら進む。

灰色に舗装された道路に白い花弁はとても映えて、綺麗だ。

桜は創立当初に植樹されたもので、わたしなんかより長く生きているので幹も太く、枝ぶりも立派だ。

左右の枝が伸び、枝の先がくっつきそうなくらい。まるで握手しようと指先を伸ばしているよう。

今年の春は少し肌寒かったせいか咲き始めが遅く、現在八分咲きといったところだ。

薄いピンク色の花びらが重なってけぶって見える。幻想的で、儚げなその雰囲気に魅せられながらわたしは歩いた。


昇降口の近くに設置された掲示板にはクラス分けが貼り出されており、たくさんの人で賑わっていた。

みんな掲示板を見ながら悲鳴や歓声を上げていた。学生にとって一年の大部分を共に過ごす仲間は重要だから、悲嘆も喜びもひとしおだ。


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